「時代の要請」嗅ぎ取る想像力
コロナにより、時代は変わった。
「Something New!(時代の要請に応え続ける)」。これは私の修業先であるキャブステーションで学ばせていただいた、経営の根幹を成すキーワードの一つだ。パンデミックで価値観の変容が進み、蓄積してきた経験やデータに頼る意味が薄れ、足元のニーズのその先にある「時代の要請」を嗅ぎ取る想像力が強く求められている。
もう一つ、「新しいことはいつもローカルから始まる」とは、地元香川で、瀬戸内うどんツーリズム推進協議会やURASHIMA VILLAGEなどのプロジェクトで連携する瀬戸内ワークスの原田佳南子社長の言葉だが、真にその時代が来たと肌で感じている。
2020年5月、世に先駆け、オンライン会議システムを活用した「オンラインバスツアー」を開始した。地元で実施するコトバスツアーのお客さまと非対面でも”会える場所”を作ろうというのが契機だった。デジタルになじみが薄い中高年層も参加しやすい「ツアー形式」とし、かつ「地域の食」を届けてリアル体験に近づける工夫を施した(苦しむ地域のパートナーの力になりたい思いもあった)。
1年間でメディア取材は百数十回。コロナ禍の成功モデルとして関心を得た。当初地元に向けた企画が、全国のお客さまに利用いただけるサービスへと成長した。国内のみならず、海外で全編英語のインバウンド向けツアーも開始した。田舎のバス会社が、大手企業・全国自治体から連携を求められるリーディングカンパニーの一つとして数えられるようになったのだ。
成功要因は「素早く決断し、完璧じゃなくても誰よりも早く行動にしたこと」に尽きる。走りながら改善すれば良い。後に多く「同じようなことを考えていた」と耳にしたが、ほとんどは結局サービスインまで至っていない。某大手企業担当者は「社内決裁に半年かかった」そうだ。つまり、アイデアによる成功ではなく、アイデアを形にすべく迅速な一歩を踏み出せたかどうか、が明暗を分けた。この点、小さなローカル会社の方が挑戦しやすい環境にあるのだろう。
これからの観光業界全体や観光まちづくりの観点でも、惰性の常識から脱却し、革新に向けた歩みを力強く進めるべきではないか。見通しが立たない状況下で「やり過ごせば、いつか元に戻る」という考えは、神頼みでしかない。コロナ直撃から1年、まだしばらく影響を受けることは必至だ。目指すべきは「元通りの未来」ではなく、コロナを経て変化した「新たな未来」だ。未来を切り開き、新時代の担い手となるのはU40(40歳以下)世代。想像力、行動力を兼ね備えた新時代の旗手に、私たちはバトンをつながなければならない。